銀行のための戦略的ワークフォース計画
計画から実行へ:ワークフォース計画遂行のためのよりスマートなアプローチをご紹介します。
Anaplan が持つ計算能力とコネクテッド プランニングは、まさに我々に必要なものでした。Urban Ehret 氏, CFO
投資計画の策定にかかる時間を 6 週間短縮することで、戦略的なリソース配置に費やすより多くの時間を確保
単一の統合型事業計画プラットフォームを導入することで、数百のシートを含む 20 のワークブックの使用を廃止
スイス国内で SBB として知られている Swiss Federal Railways 社の最大部門である旅客輸送部門は、15,000 人の従業員を抱え、1 日あたり 130 万人の旅客を運び、連結売上高は 55 億スイス フラン (60 億 USD) にも及びます。旅客輸送オペレーションは、SBB 社の財務計画内の統合事業計画が基盤となっており、その計画は数年先を見据えたものでした。財務計画の策定には、多くの手順が必要でした。
SBB 社旅客輸送部門の CFO である Urban Ehret 氏は、同部門の計画業務の特徴についてこう述べています。
「最も重要なのは時刻表です。ヨーグルトの製造会社では、生産計画を基に販売計画を作成します。しかし、我々の場合、需要計画と生産計画は時刻表によって決まり、一度時刻表が決定されると、これを変更することはできません」
他にも鉄道輸送計画ならではの二つの特性があります。まず、SBB 社の計画は非常に長いタイムフレームを見据える必要があり、インフラストラクチャ ルート (つまり鉄道路線) については最大 100 年、車両については約 25 年にも及びます。そのため、Ehret 氏のチームは、6 年間の中期経営企画を基にオペレーションを行っています。また SBB 社は縦横の両方向で統合されており、各部門の計画業務は大規模かつ複雑なものでした。営業、サービス、IT、メンテナンス、及び他の事業部門は個別に運用されながらも、お互いに依存していました。旅客輸送部門だけでも、社内の 30 以上の事業部門と連携しながら計画を策定する必要があります。
計画業務の複雑性、スコープ、関係する事業部門の数の多さによって、SBB 社の旅客輸送部門が専門的な計画ツールを必要としていることは明白でした。しかし、そのようなプラットフォームを導入する前に、同社はスプレッドシートで業務および計画ロジックを標準化し、専門的な計画環境に移行するためのプロトタイプを構築する必要がありました。
それは巨大なプロジェクトでした。最大 150 のシートを持つ 20 のワークブックが作成され、各スプレッドシート間のデータ交換を制御するために 12,000 のスクリプトが作成されました。社内では、このプロトタイプは、ラドヤード キップリングによる小説とその登場人物にちなみ、「ジャングル ブック」と親しみを込めて呼ばれていました。
しかし、スプレッドシート ベースの限界とその問題点はすぐに明らかなものになります。各事業部門の予算では異なる数値が使用されており、情報の交換は子どもの伝言ゲームのようなもので、もともと X であったものが計画システムに取り込まれると、Y になっている始末でした。旅客輸送部門財務チームのサービス センター コントロール責任者、Fabia Odermatt 氏は「同じデータベースを共有しない限り、数値の共有や信頼性の高い連動したキャパシティ計画を立てることはできません」と述べています。エラーが発生するリスクに加え、膨大な数のデータを統合するには、長い時間がかかりました。ある部門の作業で遅れが生じれば、システム全体での集計は数日かかっていました。
さらに別の課題もありました。SBB 社の財務計画は、地域交通の公的な助成金の基盤となっていました。同社の財務計画は、助成金の必要性を確認するために、連邦政府とさまざまな行政機関 (カントンと呼ばれる州政府) によって使用されています。また、コンプライアンス遵守のために監査証跡が必須でしたが、ジャングル ブックは、それを提供することができませんした。
このような理由で、基準は明確でした。スイス交通省および内外の監査人により、包括的な透明性を求められているため、新しいプランニング ソリューションは監査可能なものである必要がありました。しかし、それ以上に、ソリューションにはより高い統合性と直感的な使いやすさが求められていました。
「新しい状況に対応できるだけの柔軟性も、我々にとって重要な基準でした。弊社の組織は頻繁に再編されるため、財務計画を定期的に更新する必要があります。計画をすばやく適用し、それをできる限り IT 部門の支援を受けることなく実行できることが重要です」と Ehret 氏は述べています。さらに、計画をリアルタイムで連動させること (つまりコネクテッド プランニング)、計画シナリオのシミュレーションが可能であることも必須でした。たとえば、新型コロナウイルスの影響で利用者が少なくなった場合、どこで、どのようにコストを削減できるかなどです。このような予測できないイベントが発生したことで、シナリオのシミュレーション機能は重要なものになりました。
2019 年、チームは新しい計画業務ソリューションを探し始め、標準化された選考の結果、SBB 社旅客輸送部門の新しいソリューションとして Anaplan が採用されました。 「ジャングル ブック」の後継として、Anaplan は概念実証に裏打ちされた使いやすさ、IT 部門からの独立性の要件を満たしました。さらに、同じような規模の複雑な計画機能を必要としていた Nederlandse Spoorwegen 社 (オランダ鉄道株式会社) をはじめ、多くの企業に採用されていたことで、「Anaplan の成熟度に確信を持つことができた」と Odermatt 氏は語っています。
Anaplan のコネクテッド プランニングは、プロトタイプ ソリューションで使用されていた 12,000 ものスクリプトに対応するために、特に重視された機能でした。
「Anaplan が持つ計算能力、社内のオペレーション レベルでのサブ プランニングをシームレスに統合するコネクテッド プランニング能力は、まさに我々に必要なものでした」と Ehret 氏は述べています。クラウドベースの Anaplan では、技術的な設定が不要になり、契約締結後はすぐにアクセス可能で、Anaplan での財務計画環境をすぐに構築し始めることができました。
SBB 社は、この構築における支援を IT 及びプロセス コンサルティング会社で Anaplan のパートナーでもある valantic 社に依頼しました。
「我々は、彼らの指導を受けながら、ジャングル ブックの財務計画プロトタイプを Anaplan 上でモデル化しました。valantic 社は弊社の 3 人のモデル ビルダーと協力しながら、ベスト プラクティスと専門的技術を構築プロセスに適用しました。彼らの指導によって、我々は自分たち自身で計画モデルを作成することができました」と Odermatt 氏は述べています。
SBB 社のチームは、アジャイル方式で新しい財務計画モデルを構築しました。新型コロナウイルスの影響が拡大する中で、状況に対応し、シナリオをモデル化する能力が重要になりました。プロジェクト計画および投資計画モデルは、想定よりも早い時期に実装され、財務計画と連携するようになりました。これが、10 億スイス フランの価値を持つ 350 以上の同社のプロジェクトに関連する状況の変化に対応したシナリオを作成する、唯一の方法でした。
たとえば、IC 2020 車両のリニューアル プロジェクトの要件に変更が発生した場合、どれくらいのスタッフを増やす必要があるか、残業代の支払いでそれに対応できるか、プロジェクトに遅延が発生するかなどのシナリオのシミュレーションが必要です。
「Anaplan は非常に使いやすいシステムであるため、我々は伝言ゲームをすることなく、変化に対応できています」と Odermatt 氏は言います。
現在、6 年間の中期計画は完全に統合され、リアルタイムで策定されています。同時に、Anaplan を他の事業部門に導入するための基盤も整備されています。現在、統合は中間的な段階にあるもののプロセスは継続的に最適化されていると、SBB 社旅客輸送財務部門のサービス センター コントロール チーム リーダー、Marcel Kummer 氏は語りました。将来的には、30 年間に及ぶ長期財務計画を統合する予定です。
目標の達成にはまだいくつかの道のりが残っていますが、Kummer 氏は多くの成果を挙げたと語ります。
「現在、約 100 名の計画担当者が Anaplan を使用しており、彼らは Anaplan に満足しています。Anaplan の導入前は、連結業務に 4 人で 4 時間程かかっていました。今では、その時間は大幅に短縮され、より効率的なものになりました」
投資計画プロセスは 6 週間短縮されましたが、質的な改善は量的な改善よりも大きいものになっています。
「Anaplan がもたらした改善によって、我々は計画に関する議論の中で、適切な問題提起を行えるようになりました。『どの数値が正しいのか』という質問ではなく、『どこでリソースを必要としており、どのように対応すべきか』というような、経営陣が行うべき、より本質的な議論が行えるようになりました」と Kummer 氏は述べています。透明性の高い、リアルタイムの計画業務に満足新しいソリューションによって、SBB 社における経営企画の質は大幅に改善されました。
「Anaplan を導入したことで、精度は高まり、数値は監査可能になりました」と Ehret 氏は述べます。
エラーが発生しやすい、手動のプロセスは過去のものとなり、各事業部門は互いにコミュニケーションをとり、ボタンを押すだけで集計やシミュレーションを行うことができます。
「Anaplan が提供するこのようなオプションで、我々は計画業務を事前にコントロールできるようになりました」と Odermatt 氏は語ります。
これにより、SBB 社の全体的な戦略の妥当性が改善されました。
「現在我々は、財務的および人的リソースの不足を早い段階で把握し、修正措置を実行できています。運転手なしでは、列車は目的地に辿り着くことはてきません」という言葉が示すように、Ehret 氏と SBB 社の経営陣はまさに運転手といえます。
SBB 社がこれから 30 年後に目的地に辿り着くように、計画に沿ってビジネスが進むよう尽力しています。